大学で経営学を学んでいる人、もしくは学ぼうと思っている人は、簿記・会計の領域を最優先で学ぶべきだと個人的には思います。
経営学の領域は広い
ひと言に経営学と言っても、その領域には幅広い世界があります。
経営戦略をはじめ、コーポレートファイナンス、マーケティング、生産管理、サプライチェーンマネジメント、人的資源、技術経営、経営史など、その領域は極めて多彩です。
そして、多彩が故にどこに軸足を置けば良いのかが分からなくなります。
個人的には、そのような学生は会計領域に軸足を置くのが、コスパの観点から見て得策だと思っています。
そう考える理由は3つ。
具体性が高く、即効性が高く、汎用性も高いからです。
1.具体性が高い
まず、そもそもの話、経営学という領域は基本的に抽象的な話が多い。
あらゆる会社の過去事例をもとに、『こうやったから上手くいった』とか『こんなことをし たから失敗した』といった議論を繰り返し、その事例からの学びを抽象化して『〇〇戦略』とか『〇〇方式』といった類の名前がついたりするわけです。
この点は戦略論、マーケティング、生産管理なんかも同じです。
しかし、会計領域は違います。
会計というのは、日々の企業活動の一つ一つを数字で記録して、全社の 成績や状態を係数的に示すための手段です。
生産設備を買って、商品を開発して、材料を仕入れて、モノを作って、販促して、販売して、輸送して・・といった すべての活動を最終的な成績表に落とし込むのが会計なのです。
これは他の領域とは異なり極めて個別具体的な内容です。
具体的な内容ゆえに『知っている』だけで役に立ちます。会社に入ってから、自分たちの活動が最終的な成績表にど のように効くのか、イメージできれば仕事の質は間違いなく上がります。
特にコーポレート系職種の場合は仕事の中に数字の話はついて回るので必須です。
たしかに数字に疎くても個別に仕事はできます。しかし、キャリアの幅は限られます。
2.即効性が高い
経営学では抽象化したフレームワークをたくさん学びますが、そのまま実世界で使えるわけではありません。
どんなメーカーでもトヨタ生産方式を取り入れたらいいのか?と言われたら、答えは間違いなくNoなわけです。
必ず、会社の特性や直面している状況に応じて、柔軟に最適判断を下さなくてはならないのです。
そのため、往々にして、『経営学の知識なんて実ビジネスの世界では役に立たない』なんて言われたりするわけです。
何でもかんでも経営学のフレームワークで片付けら れると思うなよ、ということです。
一橋大学大学院国際企業戦略研究科の楠先生は『センス』という言葉で経営を語られていますが、実際の経営は論理だけではどうにも太刀打ちできないのです。
座学でセンスは磨けません。
その点、会計の世界は違います。座学で学んだことがダイレクトに実世界で使えます。
会計のルールとその処理は基本的に会社の枠を越えて普遍です。
もちろん判断の余地があるケースもありますが、基本的な判断基準はいつも同じで、会計基準にあります。
つまり、会計の世界には『答え』があるのです。
そのため、学生のうちに座学で学ぶには持ってこいなわけです。
経営学の領域で最も得た知識がそのまま活かせるのが会計だと思うのです。
3.汎用性が高い
『会計は基本的に普遍だ』と言いましたが、それは言い換えれば、汎用性が高いということでもあります。
つまり、基本的な考え方は会社や業種の枠を超えて使い回せるということです。
実際、会計領域の職種はその他の職種に比べて、労働力の流動性が高いと言われます。
私の体感値からしても、経理系人材の流動性が高いというのは納得感があります。
私が勤める会社の場合、40名ほどいる経理人員のうち13名が中途入社してきた方です。逆にウチから出て行く人材もそれなりにいます。
私が一緒に働いている転職者の出身は、監査法人、コンサル、総合商社、電子機器メーカー、制作会社など様々です。
会計知識がいかに普遍的かがよく分かると思います。
まとめ
いかがでしょう。
経営学を学ぶ人は幅広い領域を相手にすることになります。
そのため、軸足をどこに置くかは重要な問題になります。
その点で、会計は実ビジネスを経験せずとも座学ベースで実力をつけられる数少ない分野です。
学生が学ぶにはもってこいの領域ではないでしょうか。
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