いずれは海外に赴任したいと思っている人は今の時代でも一定数いると思うのですが、人それぞれ「海外赴任」のイメージ・期待値が結構違うと思うので整理しておきます。今回は30歳前後での海外赴任を3つの類型に分けてみます。
1.現地レポートライン組み込み型
ローカル社員で組成された大規模な現地法人に飛び込むパターン。僕のおかれた状況がまさにコレです。ほとんどの場合、現地人が上司になります。「立て付け」としては日本の本社にいるのとあまり変わりませんね。しっかり組織のラインに組み込まれるわけです。
日系メーカーの場合、欧米拠点への赴任がこのタイプになることが多いと思います。多くの場合、開発、製造、販売、間接部門などの機能を総合的に保有する組織は欧米に配置されがちで、アジアは生産、販売のどちらか一方に特化した組織になっているケースが多いからです。
このタイプの特徴は、欧米メジャー企業のスタンダードに近い働き方を体感できることです。日系企業に就職しながら西洋のワークスタイルでキャリアを形成できるのは魅力かもしれませんが、僕のように日本の働き方に慣れきった人間にとっては、苦労も伴います(というか苦痛でしかない)。なお欧米(とくに米国)では、英語力があまりに低いと相手にしてもらえないので、高い英語力は大前提です。
2.日本人だらけの現地法人型
海外なのに、中間管理職以上の役職の多くが日本人で占められている組織に赴任するケースです。アジアに設立された大規模な工場はこのタイプになる可能性が高いと思います。日系メーカーの多くは、東南アジアの工場において、管理職レベルまでローカル社員で構成することを想定していないからです。いわゆるブルーカラーは100%現地人にして低賃金の恩恵を受けようとしますが、生産の技術や本社とのやりとりなどは基本的に日本人がやります。組織の要に現地人を置かないのは、欧米と比べて現地人の職務能力に限界があると見ているからですね。
このタイプの赴任では「海外で仕事した」という感触が得にくいです。ミーティングは殆どが現地の日本人同士で行われます。まれに現地人がいる場合では「通訳さん」がつくケースも見られます。そもそもタフな議論に耐えられるだけの英語力が求められる訳ではないので、駐在員の多くは英語力が高くありません。その代わり、生産の技術的な側面では強い専門性を持っています。日本の技術をアジアの工場に移管する能力が最も重要な訳ですね。
3.現地管理職型
若くして現地法人のマネージャーになれるケースです。このタイプはアジア諸国や中南米の販売会社に赴任する場合によく見られます。完全に現地化している欧米の大法人とは違って、販売オンリーの小さな組織です。販売活動自体は現地人スタッフに任せることが多いと思いますが、拠点のマネジメントは日本人がやるケースが多く見られます。この地域の拠点を現地人だけで管理させることは、ガバナンス上のリスクが大きいと考えられているのかもしれません。
このタイプの赴任は比較的マネジメントの経験を積みやすいです。組織運営を任されるわけですから、他のタイプと比べて自由度も高くなります。組織全般について考えるのが仕事なので、販売、マーケ、経理、人事などあらゆる領域が仕事の対象になる点も、スペシャリティがモノを言う欧米や工場とは大きく異なる要素です。
まとめ
まとめると以下のようになります。
1.現地レポートライン組み込み型
欧米の大組織に赴任する場合によく見られるパターン。組織のレポートラインの中で専門性を発揮するのが大事。欧米組織の働き方を経験できる。
2.日本人だらけの現地法人型
アジアの工場に赴任する場合によく見られるパターン。日本にいるのと大きく変わらないため、英語の重要性が最も低い。大事なのは生産技術などの専門性。
3.現地管理職型
アジア・中南米の販売拠点へ赴任する場合によく見られるパターン。組織運営を任されるので、あらゆる職能が自分の仕事になってくる。自由度が最も高い。
どこに行くかで得られる経験が大きく変わってくるので、キャリアを考えるときは「海外赴任」というビッグワードだけでイメージを膨らませない方が安全です。
コメントを残す